【あらすじ&ひとりごと】
とても読みやすい、心に残る作品でした。
以前からずっと読みたいと思いながらも数年が経ち、やっと手にした一冊。
この作品は、茨城県牛久市を舞台にアラサーの女性を主人公として、恋愛や仕事、家族との関係に悩む姿が描かれた物語です。
誰しもがそんな悩みを一つ二つ当たり前のように抱えていることなので、性別や年齢に関係なく、とても共感させられました。
主人公は、親の介護のため東京のアパレル会社を辞め実家に戻り、アウトレットモールの衣料品店で働いている。
32歳となり、友人が結婚していく中、仕事や恋愛、家族との関係など、自分の将来が不明確な状況に悩みながらも進もうとするひとりの女性の姿が描かれ、心を揺さぶられます。
この約500頁の中に、恋人がいて友人がいて、会社の同僚、そして家族、それぞれが悩みに対する考え方や受け取り方が違うけれど、そこに綴られる言葉が温かく描かれていて、プレッシャーから解放されたような思いでした。
人が生きていく中で、「自転しながら公転する」という言葉の意味が印象的で、とても大切なことだなぁと思います。
そして最後に、「別にそんなに幸せになろうとしなくていいのよ。幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思い通りにはならないものよ」という言葉が、読後に強く心に残りました。
2ヶ月ほど前、山本文緒さんが亡くなられて一年という新聞記事を見て、はじめて他界されていたことを知ったのですが、人と人の間に起きる感情を表現する山本さんの言葉をもう読むことができないのは、とても残念でなりませんね。