【あらすじ&ひとりごと】
カズオ・イシグロさんの『クララとお日さま』を漸く読むことができました。
イシグロさんのノーベル文学賞受賞後第一作、もう3年もたつのですね。
太陽をエネルギーとして動く、人間の子どもの遊び相手として開発されたロボット(AF・人口親友)が家族に購入され、一家に仕える物語です。
店舗に並ぶAFたちは、子どもたちに選ばれるのをひたすら待っている。その中のひとり、クララは、女の子のジョジーにひと目惚れをされ、一家に仕える使用人として買われていく。
家族ではなくて、あくまで家族を助けるロボット、使用人として人間に所有される運命が寂しい。
不穏な展開になってきても、クララの献身的な愛情に読者の気持ちが救われる感じです。
結局、AFたちは、使用目的を終えると廃棄されることになる。クララが穏やかに廃品置き場に佇むシーンに何とも言えない寂しさが溢れますね。
人ではないとわかっていても、店舗で買われること待ちわびて、一家に仕え家族に対し衷心的に愛情を注ぐ、そんな感情を思っていながらも、目的を終えたら簡単に捨てられる。
でもAFにとって、職務を果たすことで、それが幸せであり、成功であるという気持ちがとても切ない。
複雑な思いと、寂しさの余韻をいつまでも残す読後感でした。この切ないビターさがイシグロさんの作品なんでしょうね。
とても心に残る作品でした。