【あらすじ&ひとりごと】
柚月裕子さんの『ミカエルの鼓動』を読みました。
手術支援ロボットをめぐり、患者にとって医師とはどうあるべきか、医師の思いと患者の思い、命の意味を問う作品です。
北海道中央大学病院 循環器第二外科科長の心臓外科医・西條泰己は、手術支援ロボット「ミカエル」の第一人者として、 ミカエルによる手術を全国的に広げようと推進する。
そこにドイツ帰りの天才医師・真木一義が客員として循環器第一外科科長として着任することになった。
真木は挨拶のため病院を訪れた際、一刻を争う急患が搬送され、着任前であったが、西條たちの目の前で、手術支援ロボットを使用せず、とてつもない速さで大動脈人工血管置換術を見せつける。
ふたりは、心臓に難病を抱える少年の治療方針をめぐって、「ミカエル」を用いた最先端医療か、従来の開胸手術かで対立するが、そんな中、西條を慕う若手医師が自ら命を絶ち、「ミカエル」の誤作動が囁かれ、疑念を抱く西條は、医師としての正義と葛藤していく。
現在、国内で導入されている『ダヴィンチ』を思い出しました。医療界でどの程度進んでいるのかはわかりませんが、近年のAIの進歩をみると、医療のみならず、ロボットが我々人間の代わりをおこなう時代はもう遠くはないのだろうと思います。
最先端の医療、技術の進歩、そんな時代を迎えようとしながらも期待の中に不安もまたありますが。
患者の思いに向き合う医師の思いと、命の尊さは、医療が進歩し続けても変わらない真理。読んでいて、行きつく真実はひとつなんだと感じました。
医療のあり方と向かうべき未来、そして医療の平等。そこに存在する「命」の意味を問う感動的な社会派小説でした。