【あらすじ&ひとりごと】
大阪の空堀商店街を舞台にした物語です。
祖父が遺したガラス工房を引き継ぐことになった兄妹。
兄の道(みち)は、周りと同じ行動がとれず、他人の気持ちに共感することができないが、純粋な気持ちをガラスに吹き込んでいく。一方、妹の羽衣子(ういこ)は、兄とは対照的に何事もそつなくこなすが、突出したものがなく、兄と自分を比較しながら特別な才能を求め自分を追い込む。
そんなある日、工房にガラスの骨壺が欲しいという依頼がくる。骨壷をつくりたい道と相容れない羽衣子。
ふたりは子どもの頃から互いに蟠りを持ち、それぞれを疎ましく思っていたが、祖父への思いから少しずつ互いを理解し、負の感情を溶かしていく。ガラス工房で繰り広げられる10年間の兄妹の絆の行方を描いた物語です。
兄妹が嫉妬や疎ましさを抱きながらも、それぞれが他人から傷つけられたときには、互いを思いやり、ときどき心を通わせる瞬間が心をあたためます。
きょうだいって、そんなものかもしれませんね。
日常に溢れる普通の出来事をさらりと普通に飾らず表現する言葉に、心が大きく波打ちます。そして、スーッと心が凪いでいく小説でした。