【あらすじ&ひとりごと】
18世紀絢爛の水の都ヴェネツィアを舞台にした、とても美しい作品でした。
『ピエタ』というタイトルからは、ミケランジェロの彫刻像を私は最初に思い出す。
イタリア語で「哀れみ、慈悲」。
ページを開くと、それが孤児を養育する「ピエタ慈善院」であることに気付きます。
物語は、ピエタ慈善院で育ったエミーリアという女性の視点で描かれる。
ピエタで音楽の才能に秀でた女性だけで構成する「合奏・合唱の娘たち」を指導していた『四季』の作曲家であるヴィヴァルディの訃報がエミーリアに届くところから始まっていく。
そして、教え子であるエミーリアは師であるヴィヴァルディの一枚の楽譜を探すため、恩師と関わりのあった人々を訪ね、思いがけない真実へと導かれていく。
これは史実を基に描かれていて、ヴィヴァルディが残した一枚の楽譜の行方を追いつつ、ヴェネツィアに生きる女性たちを描いた静かな美しい物語でした。
中世ヨーロッパの描写がそれほどなかったにもかかわらず、ヴィヴァルディが、そしてヴェネツィアに生きる女性たちがゴンドラに乗り、大切な人に会いにいく。その情景だけでも美しさを感じる。
そして、物語に流れるヴィヴァルディがピエタの「合奏・合唱の娘たち」のために書いたという協奏曲「L'estro Armonico(調和の霊感)」がとても象徴的でした。
翻訳された海外作品を読んでいるような雰囲気で、いつもと違った充足感を味わうことができました。
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