【あらすじ&ひとりごと】
深緑野分さんの作品を読むのは、『この本を盗む者は』に続いて二冊目です。
以前、『ベルリンは晴れているか』が気になっていたのですが、大戦終結後の戦争小説ということもあり、手にはしませんでした。
でも、そこにこの『戦場のコックたち』。
戦争小説とはいっても、コック兵としての視点から描かれるものと期待して読みました。
でも当然ながら、戦争の残酷さは描かれ、胸が苦しくなって序盤はなかなか読み進められませんでしたが、戦線の中に次々と起こるミステリ、青年兵たちの友情と葛藤が描かれ、とても読み応えのある作品でした。
舞台は第二次世界大戦ヨーロッパ戦線。
17歳で合衆国陸軍の特技兵(コック)として志願し、ノルマンディ上陸作戦に戦線した主人公・ティムの語りで物語は進みます。
心優しく、戦場で起きるいくつかの奇妙な出来事に見舞われながらも、そこで出会った仲間たちとともにヨーロッパ戦線を駆けていく。
徐々に戦地の凄惨さが増していく様は、青年兵たちとともに、私も戦争に引きずりこまれていくような心地になりました。
仲間を失うたびに、優しいティムの心が変わっていきますが、周囲の仲間によって大切なことに気付かされます。
そして、死んだ仲間の遺品を身につけ、仲間と離れた寂しさを感じる様は、戦争が奪うものの大きさと無意味さを改めて感じ苦しくなりました。
終戦後、ティムに宛てられた死んだ仲間からのそっけないたった一文の遺書が明かされます。
そして、大切に抽斗にしまったその仲間の遺品が消える。
最後にぐっとくるものがありました。
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