ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】グリム童話『野ぢしゃ(ラプンツェル)』

『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その8

『野ぢしゃ(ラプンツェル)』〈KHM12〉

 

【あらすじ&ひとりごと】

 昔、あるところに夫婦がいました。

 二人は長い間子供を欲しがっていましたが、やっと望みが叶いました。

 夫婦の家の裏側には、美しい花や野菜がなる立派な畑がありましたが、そこは魔法使いの女のもので、近づくものはいません。

 

 ある日、妻は畑の野ぢしゃ(ラプンツェル)を見て、どうしても食べたくなります。その気持ちが大きくなり、妻はすっかりやせてしまったので、亭主は妻のために野ぢしゃを取ってきてやろうと考えます。

 

 亭主は魔法使いの畑から野ぢしゃを取って来て、妻に食べさせました。妻はおいしくて次の日も食べたくなります。

 

 次の日も亭主は畑に行きますが、目の前に魔法使いの女が立っていました。

 魔法使いは、「ひどい目にあわせてやる」と話すと、亭主は妻が「野ぢしゃを食べなければ死ぬ」と言うと答えると、魔法使いの女は怒りを鎮めて、欲しいだけ野ぢしゃをくれてやるから、妻が子供を産んだら、その子を差し出すようにと話しました。

 亭主は、怖くなって約束してしまいます。

 

 それから妻が子供を産むと、すぐに魔法使いの女が姿を現し、子供にラプンツェル(野ぢしゃ)という名をつけて、連れて行ってしまいました。

 

 その後、ラプンツェルはこの世で一番美しい子供になり、12歳になると、魔法使いの女はラプンツェルを塔に閉じ込めます。

 その塔は森の中にあって、小さな窓が一つあるだけで、はしごもなければ出入りの扉もありません。

 魔法使いの女が中に入る時は、

ラプンツェルラプンツェル、お前の髪をさげておくれ。」

と呼びかけます。

 そうすると、ラプンツェルは黄金色の長い髪の毛をほぐして、下にたらします。髪の毛は12メートルほどあって、魔法使いはそれを登って来るのでした。

 

 それから何年かたち、この国の王子が、塔のそばを通りかかり、ラプンツェルの歌声を聞きます。

 王子は女に会おうと塔に入ろうとしますが、入口はどこにもありません。

 それから王子は、毎日森へ歌を聞きに行きました。

 

 ある日、魔法使いの女がラプンツェルの髪をのぼって塔に入るのを目にします。

 その次の日、暗くなってきた頃に王子は塔のところで、「ラプンツェルラプンツェル、お前の髪をさげておくれ。」と言い、王子は上にのぼって行きます。

 ラプンツェルはびっくりしますが、王子はやさしくラプンツェルの歌に惚れて、ここまで来たことを話しました。

 ラプンツェルは王子に結婚を申し込まれ承諾しました。

 

 そして、ラプンツェルは塔の下へ降りるため、王子がここへ来るたびに絹の紐を一本ずつ持ってきてほしい、それではしごを編んで、はしごができたら下へ降りて、馬に乗せてもらうと話しました。

 

 魔法使いは、このことに気づかなかったのですが、あるときラプンツェルは、魔法使いの女を引っ張り上げるのは、王子よりも重いと話してしまいます。

 魔法使いは怒り、ラプンツェルの長い髪の毛をはさみで切り落としました。それからラプンツェルをどこかの荒れ野に連れ込みました。

 

 ラプンツェルを追い出すと、魔法使いの女は切り落とした髪を塔のてっぺんの窓の鈎へ結びつけます。

 その夜王子が来て、「ラプンツェルラプンツェル、お前の髪をさげておくれ。」と言うと、魔法使いはその髪の毛をぶら下げます。

 王子がのぼると、上にいたのは魔法使いの女で、ラプンツェルにはもう二度と会えないと言われ、王子は悲しくなって、塔から飛び降ります。

 

 命は助かりましたが、からたちのいばらの中に落ち、棘で目をつぶされました。王子は失明して森の中を彷徨います。愛しいラプンツェルを失くし、泣くしかありませんでした。

 

 何年か歩いていたある日。

 ラプンツェルが、自分の産んだ男の子と女の子と一緒に暮らしている荒野へたどり着きました。王子は聞き覚えのある声だったので、その声のする方へ歩いていきます。王子が来ると、ラプンツェルは王子の襟首をつかんで泣きました。

 その涙が2滴、王子の目を濡らすと、目は元通り見えるようになりました。

 王子はラプンツェルを国へ連れて行き、幸せに暮らしました。(要約)

 

 

 魔女は美しいものを束縛したがる欲望がありますね。グリムの他の話でも出てきます。

 あと、ラプンツェルがいつの間に男の子と女の子を産んでいたのでしょう。

 父親については記述がありませんでしたが、他にだれもいないので、王子なのでしょう。グリム童話では、そういった描写はあまりないようです。

 ラプンツェルが、魔女を引き上げるとき、王子よりも重いと言ってしまったことが不幸の始まりでした。余計なことを口にしてはいけません。

 いつもどおりのハッピーエンドでしたが、グリム童話定番の悪者をひどい目にあわせるところがなくて、残念。

岩波文庫(1979)