ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】グリム童話集『ならずもの』『兄と妹』

岩波文庫(1979)

『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その7

『ならずもの』〈KHM10〉

【あらすじ&ひとりごと】

 雄鶏と雌鶏のつがいは、山へ出かけ、クルミをたらふく食べた後、歩いて帰るのが嫌になったため、クルミの殻で小さな引き車を作りました。しかし、どちらが車を引いていくかで口喧嘩になります。

 

 しばらくすると、遠くから一羽のカモがやってきて、鶏が自分の山のクルミを無断で食べてしまったことに怒り、襲いかかりましたが、負けてしまい罰として車を引かされます。

 

 走っていくと途中で留め針と縫い針に出くわし、車に乗せて欲しいと頼まれ、乗せます。

 

 夜になり、宿屋にたどり着きますが、宿の主人は、うさんくさい鶏たちの宿泊を渋りますが、雌鶏に産んだ卵とこのカモをあげるからと説得され、泊めてもらうことになります。

 

 翌朝、鶏のつがいは早起きして、くちばしで卵に穴を開けて中身を飲み、殻をカマドへ放り投げ、そして、まだ寝ている留め針と縫い針を宿の主人の椅子のクッションと洗面所の手ぬぐいに刺した後、逃げ出しました。

 カモもその音に目を覚まし、小川に飛び込んで逃げました。

 

 2~3時間後、宿屋の主人が目を覚まし、顔を洗い手ぬぐいで顔をふくと、刺してあった留め針が顔に刺さります。

 慌てた宿屋の主人は、落ち着こうと煙草に火をつけるため、カマドに近づくと、主人の目をめがけてタマゴのカラが弾けて飛んできます。

 そして主人はムシャクシャして椅子に腰を下ろしますが、今度は縫い針が主人のお尻に刺さりました。

 主人は昨夜遅くにきたあの客が怪しいと疑いますがもう遅く、宿にはいませんでした。

 

 宿屋の主人は、さんざん飲み食いしてお金も払わず、いたずらまでしていくようなならずものは二度と泊めないと心に誓いました。(要約)

 

 グリム童話には、ときどきこんな騒動を起こす笑える話があります。

 針が普通に仲間になって、宿屋にいたずらするなんておもしろいですね。

 教訓を考えるなら、「相手の心を見抜け」でしょうか…。

 あまりよい趣味ではありませんが、発散したい人はぜひ。

 

『兄と妹』〈KHM11〉

【あらすじ&ひとりごと】

 兄と妹は、母親を亡くしてから不幸で、継母には毎日ぶたれ、ごはんは残り物のため、家を出ました。

 二人は丸一日歩いて、夜に大きな森に着き、木のほらで眠りました。

 

 次の日、兄はのどが渇いて、水を飲むため二人は小川を探しに出発します。しかし意地悪な継母は魔女で、兄妹が逃げ出した後をつけて、森の小川全部に魔法をかけました。

 

 兄は小川を見つけ水を飲もうとします。しかし妹は水の流れから「この水を飲む者は虎になる」と聞こえるので、兄に飲まないよう言います。兄は我慢し、次の小川まで待つことにしました。

 

 次の小川に来たとき、妹はまた「この水を飲む者は狼になる」と聞こえるので、兄に飲まないよう言います。また兄は、次の泉まで待つことにしました。

 

 そして3番目の小川に着いたとき、妹は「この水を飲む者は鹿になる」と聞こえたので、兄に飲まないよう頼みますが、とうとう水を飲んでしまい、兄は子鹿になります。

 妹は兄に魔法をかけられたことを悲しみ、子鹿と一緒に森の中へと歩いて行きました。

 

 すると、小さな空き家を見つけ生活することにします。

 妹は子鹿のベッドを作り、自分のために根やベリー、木の実を集め、子鹿のために柔らかい草を運びました。兄が人間の姿に戻れれば楽しい生活でした。

 

 しばらくの間、この荒れ野にいましたが、たまたまその国の王様が森で狩を催しました。角笛の音、犬の吠える声、狩人の賑やかな叫び声が木々にこだまし、それを聞いた子鹿は気になって仕方ありません。

 子鹿は妹に、狩に行かせてほしいと言います。あまりに頼むので妹は承知しますが、夜には帰ってくるよう話し、兄だとわかるようにドアをノックしたら「妹よ、入れてくれ」と言ってほしいと言います。

 

 子鹿は外に出て楽しくなりました。王様と狩人はこの子鹿を追いかけ始めますが、捕まえられません。

 子鹿は暗くなると家に帰り、ノックして中に入れてもらいます。

 

 次の日、再び狩が始まり、子鹿はいてもたってもいられず外に出ます。王様と狩人は子鹿に再会すると、追いかけますが、素早いため捕まりません。

 一日続きましたが、夜までには狩人は子鹿を囲み、足を少し傷つけました。子鹿は足をひきずり家に帰りますが、狩人はその後をつけて、合言葉を聞きドアが開けられるのを見ていました。

 そのことを狩人は王様に話すと、王様は明日もう一度狩をしようと言います。

 

 妹は子鹿のケガを見て驚きますが、手当をし、翌朝には痛みはありませんでした。

 そして再び外の音を聞くと、子鹿は我慢できなくなります。妹は、今度は殺される、そうなったら自分はこの森でひとりぼっちになるため外には出さないと子鹿に言います。

 すると子鹿は、僕を悲しみで死なすのか、と言うため、妹が渋々ドアを開けると、子鹿は喜んで森の中へ向かいました。

 

 王様は子鹿を見ると、ケガをさせないように、夜になるまで追いかけるよう狩人に言います。

 太陽が沈んだ頃、王様は狩人に案内され、その森の家へと行きました。そして入口で「妹よ、入れてくれ」と合言葉を言いました。

 するとドアが開き、王様が中に入ると、今までに見たこともないような美しい娘が立っていました。

 

 その娘は、子鹿ではなく金の王冠をかぶっている男を見て驚きます。しかし、王様はやさしく見つめ、手を差し出して、城へ来て妻になってほしいと言いました。娘はお受けしますと答えますが、子鹿が一緒でなければならないと言いました。

 すると王様はずっと一緒で、何不自由させないと言います。そして、そのとき子鹿が帰ってきました。

 

 妹は子鹿を連れ、王様と一緒に家を出ました。王様は妹を城へ連れ、結婚式を行いました。二人は長い間幸せに暮らし、子鹿も大事に世話をされました。

 

 一方、意地悪な継母は、妹は森の野獣に殺され、兄は鹿になって狩人に撃ち殺されたと思っていました。

 今二人が幸せと聞くと、羨ましさと妬みで、二人をもう一度不幸にする方法ばかり考えていました。

 

 時は過ぎ、お妃は男の子を産みました。そこに魔女は女官の姿になり、お妃が寝ている部屋へ入り、入浴の準備ができたと言います。魔女の娘も近くにいました。

 二人は子を産んで弱っているお妃を浴室に運び、風呂に入れ、ドアを閉め逃げます。浴室は熱いので、お妃は窒息してしまいました。

 

 ことが終わると、魔女は自分の娘を連れて行き、頭巾をかぶせ、お妃の代わりに寝かせました。

 そして片目のない醜い娘をお妃の姿形に変えます。王様には見えないように目がない方を下にして寝ることにしました。

 

 夜になって王様が戻り、息子が生まれたことを聞くと喜びます。そして妻の様子を見ようとしますが、魔女は王様を止めます。王様は立ち去り、偽者の妃がベッドに寝ていることに気付きません。

 

 しかし真夜中、子ども部屋の脇で寝ずの番をしていた乳母が、ドアを開けて本当のお妃が入ってくるのを見ました。

 お妃は息子を抱き上げ、乳を飲ませ、寝かしつけます。また子鹿も忘れずに寝ている場所へ行き、背を撫でてお妃は出ていきました。

 

 翌朝、乳母は衛兵に尋ねますが、夜中宮殿には誰も入っていないと答えます。

 お妃は何日も夜に来ますが何も話さず、乳母もそのことを誰にも言いませんでした。

 

 しばらく過ぎたとき、お妃は息子と子鹿に話しかけるようになりました。「何してるの?私が来るのはあと二回だけ」と。

 乳母はお妃がまた行ってしまうと、王様のところへ行き、話しました。すると王様は明日の夜は自分が見張りをすると言います。

 

 夜になって、王様は子ども部屋に行きました。そして真夜中にまたお妃が現れ、「何してるの?私が来るのはあと1回だけ」と言いました。そして息子に乳を与えます。

 王様はあえて話しかけず、また次の夜に見張りをしました。すると彼女は同じように「何してるの?私が来るのは今夜きり」と言います。

 すると王様は我慢できなくなり、お妃に「お前は私の愛する妻だろう?」と言うと、お妃は「私はあなたの妻です」と答えました。

 すると、お妃は神様のお恵みで再び生命を受け元気になりました。

 

 それからお妃がすべてを話し、王様は魔女と娘を裁判にかけ、有罪としました。娘は森で野獣に引き裂かれ、魔女は火に投げ入れられ、焼け死にました。

 魔女が灰になるとすぐ、子鹿は姿を変え、再び人間の姿に戻りました。そして兄妹は生涯一緒に幸せに暮らしました。(要約)

 

 11番目の物語でやっと悪い魔女が登場しました。しかも継母。定番です。

 そして、悪人は罰せられ、兄妹は幸せに。たとえ鹿になっても兄を思う妹の愛がひしひしと伝わります。

 一方、兄は欲に負けてしまったとも言えますが、仕方ないですね。

グリムのこのお決まりの展開が心地よいです。

【読書】『さよならの向う側』清水晴木 著

マイクロマガジン社(2021)

 

【あらすじ&ひとりごと】

 

 書店で本書を見かけたとき、昔、山口百恵さんの歌にこんなタイトルがあったなぁと思いながら手にしました。

 

 きっと恋愛小説なのだろうと思い読み始めると、そうではありませんでした。

 人が亡くなったとき、最後に一日だけ現世に戻ってくることができ、会いたい人に会う時間が与えられる。

 

 辻村深月さんの『ツナグ』のようですが、本書では「会える人」の条件が違います。

 自分の死をすでに知っている人には会えないという。

 

 さよならの向う側と呼ばれる場所にいる案内人が、さまざまな人をエスコートし最後の再会を果たす物語です。

 

 5篇(5人が織りなす再会)からなる連作短編で、読みやすくて、やさしいタッチの文章がどんどん自分の中に入ってくるんだけど、その分涙が出てくる。

 そして案内人ののんびりしたところにほっこりしながら、最後ははじめの涙と違った温かい涙が流れている、そんな小説でした。

 

 どの短編もストーリーが類似することなく、切なさがグッときますが、今生きることの意味をふと考えさせてくれます。

 

 そして、気になる案内人。

 どのような過去をもった人なのだろうと不思議に思っていると、やはり最終話で事実が明かされます。

 

 生きることって、人と繋がっていて、その存在を認識されてはじめて生きていると実感する。

 そんな当たり前のようなことを改めて思わせてくれました。

 

 この本は、だれも生き返ることはないのに、どうしてどの物語もこんなにも幸せな気持ちにさせる結末なのだろう。そんな小説でした。

 

 続編が出ているのでまた楽しみです。

【読書】『きみはいい子』中脇初枝 著

ポプラ社(2012)



【あらすじ&ひとりごと】

 

 中脇初枝さんの作品は以前、戦時中の満州で出会った3人の少女の人生を描いた『世界の果てのこどもたち』を読んで、とても感動したことを覚えています。

 それよりも前に書かれた『きみはいい子』。

 

 本書は虐待がテーマになっていて、虐待を受ける子どもや高齢者とその家族が描かれ、その家庭に関わる教師や大人たちが悩みながらも思いやりの手を差し伸べ、一筋の光を与えてくれる短編集。

 

 一話一話のストーリーは独立したものですが、ひとつのまちが舞台となっていて、人と人が繋がっていきます。

 どの短編も心が苦しくなるけど、最後は希望へと変わっていくことに救われ、目頭が熱くなる作品です。

 

 先日もネグレクトで亡くなった5歳児の母親に対する判決が出ました。

 そんな事件がまだまだ絶えることがない。今こうしているときもどこかで子どもたちへの虐待が行われているのかもしれません。

 

 私は子どもをもったことがないから、子をもつ親の悩みすべてをわかっていないと思うし、子どもの思いも理解していないかもしれない。

 でも、子どもたちに悪い子は決していないという姿勢は強くもっています。

 ただただ、子どもたちは親や大人たちの愛情がほしいだけなのだから。

 

 とても胸が苦しくなったけど、中脇さんの綴るラストはどの短編も見えてきた光を深追いせずに、読み終えたあとの気持ちは軽くなっています。

 

 戦慄の走る物語ではあったけど、ほんの少しの思いやりや優しさによって、子どもたちの心、そして大人たちの心にも確かな希望が灯るのだと強く思いました。

 

 子どもたちがいつの時代も安心して、幸せに暮らせる世の中になってほしいものです。

【読書】グリム童話集『奇妙な楽人』『十二人兄弟』

岩波文庫(1979)

『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その6

『奇妙な楽人』〈KHM8〉

【あらすじ&ひとりごと】

 昔あるところに奇妙な音楽家がいました。

 一人で森の中を通り抜けながら考え事をしていましたが、考える種もなくなりバイオリンを弾き始めると、狼がやってきます。

 狼は「バイオリンを習いたい」と言い、音楽家は「わたしの言いつけは何でもやりなさい」と言う。

 狼は音楽家についていきますが、しばらく歩くと、柏の老木があり、その空洞の裂け目に両前足を突っ込むよう音楽家は命じます。

 そのとおりにした狼の足を音楽家は石で押さえつけてしまい、帰ってくるまで待っているよう言い残し行ってしまいます。

 

 そして、また退屈する音楽家はバイオリンを弾きます。

 すると、今度は狐がやってきました。狐もバイオリンを習いたいと言い、音楽家の言いつけに従います。

 音楽家についていった狐は、ハシバミの木に吊るされ、音楽家は行ってしまいました。

 

 また音楽家は退屈しバイオリンを弾くと、今度は兎がやってきます。

 同じように兎もバイオリンを習いたいと言い、音楽家の言いつけに従います。

 兎は首にひもをつけて、ヤマナラシの木のまわりを20回ぐるぐる回り、ひもが木の幹に巻きついて自由がきかなくなりました。

 音楽家はまた兎も置き去りにしました。

 

 その間に狼は、やっとのことで木から前足を引っ張り出し、怒り狂って音楽家を追います。

 途中で狐と兎を助けてやり、全員で仕返しをしようと後を追います。

 

 またまた音楽家は、途中でバイオリンを弾くと、今度はきこりがやってきます。

 音楽家は初めて人間がやってきたことに喜び、楽器を上手におもしろく弾くと、きこりは魔術でもかけられたようにうっとりします。

 そのとき、狼と狐、兎が仕返しにやってきますが、きこりがオノを音楽家の前に立てると、狼たちは怖くなり森の中へ逃げ帰ってしまいました。

 音楽家はお礼にもう一曲聞かせ、また旅を続けました。(要約)

 

 この内容だけではまさしく動物虐待ですね。

 でも、文末の注釈にあったのですが、この物語は完全版として伝えられていないようです。音楽の力で感動させるほどの名人が、動物を騙し懲らしめるなんて。その理由が元の話には語られていたとされています。(説話学者)

 安心しました。

 

『十二人兄弟』〈KHM9〉

【あらすじ&ひとりごと】

 昔、王様とお妃がいて、ふたりには子どもが十二人、男の子ばかりでした。

 ある日、王様はお妃に、

 「13番目の子がもしも女の子だったら、12人の息子たちを死なせて、この王国がその子一人のものになるようにしよう。」と言い、棺を12、錠をかけた部屋に持ち込みました。

 

 お妃は、一日中悲しんでいたので、一番下の子のベンジャミンが、声をかけます。

 お妃は、はじめは話しませんでしたが、うるさく言うので12の棺をベンジャミンに見せ、これがのお前たち兄弟の棺であると話します。そして、女の子が産まれると、みんな殺されてしまうことを話します。

 

 ベンジャミンは、自分たち兄弟はどこかへ行って何とかすると言います。

 するとお妃は、兄弟で森へ入り、木の上からお城を見張り、男の子が産まれたら白い旗、女の子が産まれたら赤い旗を出すことを話します。

 それから子どもたちはお城を出て、森へと入りました。

 

 一人ずつ交代で見張りをしながら、11日がたち、順番がベンジャミンに回ってきたとき、赤い旗が出ているのが見えました。

 兄たちは、これを聞くと腹を立て、女の子を見つけしだい、そいつの血を流してやると話しました。

 

 それから、森の真ん中に魔法のかかっている小さな空き家を一軒見つけました。

 12人はここに住むことにし、ベンジャミンは留守番し家事を、兄たちは狩りに行きます。こうして10年という年月が過ぎました。

 

 一方、あの日生まれたお姫様は、気立てが良く美しい方で額に黄金の星が一つありました。

 あるとき洗濯をするとき、男物の下着が12枚あることに気が付きます。

 母に聞くと、12人の兄たちの存在を知らされます。

 

 それからお姫様は兄たちを捜すため森へ入り、魔法のかかっている小さな家に着きます。

 中へ入ると男の子が一人います。お姫様は兄たちを捜していると12枚の下着を見せると、ベンジャミンはこの女の子が自分の妹だと気付き喜び合います。

 しかし、女の子に出会ったら見つけ次第に殺してやるという約束があるため、お姫様を家の中の樽の下に隠すことにしました。

 

 夜になり、兄たちが狩りから帰ってきて、ご飯を食べているとき、ベンジャミンは女の子を殺すのをやめるよう兄たちに約束させ、妹を樽の下から出します。

 すると兄様たちは喜び、それから妹との生活が始まりました。

 

 あるとき、この魔法の家には小さな庭があり、百合のような草花が12本生えていました。

 お姫様は兄たちにあげたくて、その花を12本とも折ります。

 するとその花を折ったとたんに、兄たちは12羽の鴉にばけて、どこかへ飛んで行ってしまい、その家も消えてしまいました。

 

 お姫様は独りぼっちになってしまい、あたりを見回すとおばあさんが立っています。

 おばあさんは、あの12本の白い花をなぜあのままにしておかなかったのか。あれは兄たちだったと言う。

 お姫様は兄たちを救い出す方法を聞くと、七年間、口をきいてはいけないし、笑ってもいけないとおばあさんから言われます。

 もしたった一言でも口を聞いたら水の泡になるばかりか、兄たちは殺されてしまうという。

 お姫様は決心し、高い木の枝に腰かけて口も聞かず、笑いもしませんでした。

 

 ある日、この森で狩りをするどこかの王様が木の上にいる美しいお姫様を見つけ、自分の連れ合いになる気はないかと声をかけました。

 王女は返事をしませんでしたが、少しうなずきました。

 王様はお姫様を連れ帰り、婚礼の式をあげますが、花嫁は口をきかず、笑いもしません。

 王様とお妃は楽しく暮らしましたが、王様の母親は腹黒い女で、お妃は身分のいやしいこじき娘で、笑わないなんて心のやましい人間だと言いふらし、王様はとうとう言い負かされ、お妃を死刑にすることになります。

 

 お妃が柱に縛り付けられ、火が包みだしたとき、ちょうど7年の年月が過ぎました。

 そうすると、12羽の鴉が飛んできて、地面に降り立ち、お妃の12人の兄たちになっていました。

 兄たちは火を消し、妹の体を自由にして抱き合いました。

 それからお妃は今まで口を聞かなく、笑わなかった訳を王様に話し、お妃に何の罪もないことを知って喜びました。

 それからはみんな一緒で、死ぬまで仲良く暮らしました。(要約)

 

 王様は息子たちを生贄にしてまでも女の子がほしかったのでしょうか。感情的には、また男の子(女の子)だとがっかりしながらも、新たな命の誕生に喜びを感じるのが普通ですけどね。

 ひとつ気になるのが、母親には息子に対する愛情が記述されていますが、父親には一切ないこと。やはり母の愛は強いのですね。

 

 

【読書】『聖なる怠け者の冒険』森見登美彦 著

朝日文庫(2016)


【あらすじ&ひとりごと】

 

 森見登美彦さんの作品は初読みです。

 ファンタジー作家さんであることだけは知っていました。読後に本書について調べてみたら、各作品に繋がりあって、本作品を読む前に『有頂天家族』『夜は短し歩けよ乙女』を読んでいたほうがさらに楽しめたようです。

 

 でも、とても独特なワールドでした。なかなか馴染むのに時間がかかりましたが、少しずつ免疫がつき始めると楽しくなってきました。

 

 主人公・社会人2年目の小和田君は、仕事が終われば独身寮での夜更かしを楽しみ、休日は「グウタラ」に過ごす怠け者。

 ある日、狸のお面をかぶった「ぽんぽこ仮面」との出会いから、京都祇園祭宵山を舞台にした長い土曜日一日の冒険が始まる。

 

 主人公を取り巻く面々が何とも個性的で楽しい。グウタラを求め、それをやめさせようとする人たちに起こる、とりとめのないファンタジーをまじめな調子で作者が語るところが笑いを誘う。

 そして、ぽんぽこ仮面の正体がわかったとき、もう森見さんの世界にはまっています。

 

 毎日一生懸命働いたあとの週末くらい怠け者になってもいいですよね。

 頭の中を空っぽにする時間も大切ですから。この小説を読みながら私自身頭の中が空っぽになってスッキリした時間でした。

 

 小和田君の名セリフ「僕は人間である前に怠け者です」

 私も賛成です。