【あらすじ&ひとりごと】
中脇初枝さんの作品は以前、戦時中の満州で出会った3人の少女の人生を描いた『世界の果てのこどもたち』を読んで、とても感動したことを覚えています。
それよりも前に書かれた『きみはいい子』。
本書は虐待がテーマになっていて、虐待を受ける子どもや高齢者とその家族が描かれ、その家庭に関わる教師や大人たちが悩みながらも思いやりの手を差し伸べ、一筋の光を与えてくれる短編集。
一話一話のストーリーは独立したものですが、ひとつのまちが舞台となっていて、人と人が繋がっていきます。
どの短編も心が苦しくなるけど、最後は希望へと変わっていくことに救われ、目頭が熱くなる作品です。
先日もネグレクトで亡くなった5歳児の母親に対する判決が出ました。
そんな事件がまだまだ絶えることがない。今こうしているときもどこかで子どもたちへの虐待が行われているのかもしれません。
私は子どもをもったことがないから、子をもつ親の悩みすべてをわかっていないと思うし、子どもの思いも理解していないかもしれない。
でも、子どもたちに悪い子は決していないという姿勢は強くもっています。
ただただ、子どもたちは親や大人たちの愛情がほしいだけなのだから。
とても胸が苦しくなったけど、中脇さんの綴るラストはどの短編も見えてきた光を深追いせずに、読み終えたあとの気持ちは軽くなっています。
戦慄の走る物語ではあったけど、ほんの少しの思いやりや優しさによって、子どもたちの心、そして大人たちの心にも確かな希望が灯るのだと強く思いました。
子どもたちがいつの時代も安心して、幸せに暮らせる世の中になってほしいものです。