『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その24
【あらすじ(要約)】
ある男が一匹のロバを持っていました。このロバは年をとり、だんだん働けなくなりました。
そこで飼い主は、ロバに餌をやるのをやめようと考えます。
すると、ロバは逃げ出しブレーメンへ向かって出かけました。まちのおかかえ楽隊になれるかもしれないと思ったからです。
少し行くと、猟犬を一匹見つけました。この犬も「年をとって、猟に行っても駆けることができないので、主人に殺されそうになり逃げ出した」と言います。
ロバは「ブレーメンに行って楽隊になる。一緒に入れてもらおう。俺は琵琶を弾く。あなたは鍋太鼓を打ちなよ」と話を持ちかけました。
犬は承知し一緒に出かけます。
少し歩くと、猫が道端に一匹いました。ロバが声を掛けると、猫は「年をとって、ねずみを追うよりゴロゴロ言ってるほうが気楽になったので、飼い主が水雑炊を食べさせようとしたから逃げてきたのさ」と言いました。
ロバは猫に「ごろにゃーおと鳴いて、夜の音楽は得意じゃないか、楽隊になれるよ」と言い、一緒に出かけました。
まもなく、三匹が家の横を通りかかると、門に雄鶏がとまって鳴いていました。
ロバが「骨までしみる声をしている」と言うと、「天気は上々と知らせたのさ」と雄鶏は言いました。そして「明日、俺はスープに入れられ食われてしまう。だから今のうち精一杯鳴いているんだ」と。
ロバは「一緒にブレーメンに行って楽隊になろう。あなたはすごい声を持っている」と言い、雄鶏はおもしろいと思い、一緒に向かうことにしました。
ブレーメンには一日では着けませんでした。森の中で夜を明かそうとしたとき、木のてっぺんにいた雄鶏が灯りを見つけます。
そろって灯りのほうへ行くと、それがだんだん大きくなってきて、とうとう灯りがかんかんに点いている強盗の住処の前に出てしまいました。
ロバが中を覗くと、ご馳走が並んでいました。動物たちは強盗どもを追っ払う相談をし、一つ方法を考えました。
ロバが前脚を窓枠に掛け、その背中に犬が乗り、犬の背中に猫が、最後に猫の頭に雄鶏がとまりました。
そして、動物たちは一斉に鳴きはじめ、窓ガラスをぶち壊し中へなだれ込みました。強盗どもは恐ろしい叫び声を聞いて、化け物と思い震えあがって森へ逃げ込みました。
動物たちはたくさんのご馳走にありつくことができました。
四匹の楽隊は食事の後、めいめい寝心地がいい場所を探し、ロバは堆肥の上、犬は出入口の戸の後ろ、猫はかまどの温灰の中、雄鶏はうつばりにとまり寝ました。
真夜中過ぎ、強盗どもは灯りが点いていない家を遠くから見て、「俺たちが怯えて逃げたとあってはいちぶんがたたない」とおかしらが言い、手下に様子を探らせました。
手下が来てみると、物音がしないので灯りを点けに台所に入ります。
そして、火が燃えているような猫の目を炭火と間違え、猫の目にマッチを押し付けたため、猫は強盗の顔へ飛びつき引っかきました。
強盗は仰天し逃げ出して、裏口から外へ飛び出そうとすると、そこに寝転んでいた犬が飛び起き、すねに咬みつきました。
それから庭を通って堆肥のそばを駆け抜けるとき、ロバが後肢で蹴飛ばし、うつばりの上からは雄鶏に怒鳴られます。
強盗はおかしらの元に戻って、「あの家には妖婆がいる。顔を引っかかれ、戸の前には短刀を持った男がいて足を刺され、庭には真っ黒い怪物からこん棒で打たれ、屋根の上には裁きをするヤツがいて、悪党を引っ張ってこいと怒鳴るので逃げてきた」と言いました。
それから、強盗どもはもうこの家に入る勇気がなく、またブレーメンの楽隊四匹はこの家を気に入り、二度と再び外へ出ることはしませんでした。
【ひとりごと】
有名な「ブレーメンの音楽隊」のお話ですね。
大きなテーマは、皆で相談して力を合わせることの大切さです。
初めは1匹だったロバが、二匹、三匹、四匹と仲間を増やし泥棒たちを追い出す。それぞれが役割分担をして、それぞれの特性を活かして行動する。あらためて読んでいて、今自分にできることは何なのかと思わせてくれますね。
そして、老後の生き方です。年をとって何もできないと悲観せず、まっすぐ前を見て生きがいを見つけて素敵な老後を生きていきたいものです。
なぜ四匹の楽隊はブレーメンに行かなかったのか。きっとかけがえのない友人と出会えたからでしょうね。