【あらすじ&ひとりごと】
新名 智さんの横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作『虚魚(そらざかな)』を読みました。
巻末から見てみると、新名さんの受賞の言葉と、選考委員(綾辻行人さん、有栖川有栖さん、黒川博行さん、辻村深月さん、道尾秀介さん)による最終候補に選出された4作への選評が書かれていました。
厳しいお言葉もあり、さすがに大御所作家さんだなあと思いながら本文へと入っていきました。出版された大賞作品の巻末に他の候補作の選評も載せるのですね。
体験した人間は死んでしまうという怪談を探す怪談師・丹野三咲。そして呪いか祟りで死にたいと思っているカナちゃん。二人はともに暮らし、人が死ぬというその本物の怪談を見つけ出し、三咲は両親を事故死させた男をその怪談で殺すという目的を持っている。
そんなある日、「釣りあげたら人が死んでしまう魚がいる」という噂を釣り堀でカナちゃんが耳にし、その真偽を二人は調べ始める。
そして、三咲、カナちゃん、それぞれが抱えた事情が明らかになり、怪談を探す中、隠された真実が姿を現していく。
ホラーを期待して読むと、ストーリーそのものに恐怖を感じないため物足りなさを感じるかもしれませんが、賞の名称どおりミステリとホラーの両方の要素を持っていて、ミステリ要素が強く出ている分、テンポがいいので、最後まで飽きることなく読み進められました。
序盤にカナちゃんの「呪いか祟りで死にたい」というところにまず引き込まれますね。
怪談師が「人が死ぬ怪談」を探し、人(両親を事故死させた男)にその呪いを試す(復讐する)。おもしろい内容です。これが自由に操れれば完全犯罪。
結末をむかえ思うのは、やはり怖いのは生きた人間だということですね。