【あらすじ&ひとりごと】
芦沢央さんの本は初めてです。作風も知らず、予備知識もなく手にした本、『火のないところに煙は』。
本書はホラー作品なのか、怪談の実話なのか。
ストーリーは、小説新潮から作家(私)に「神楽坂を舞台にした怪談」の執筆依頼がくることから始まる。
「私」は迷いつつも過去の悲劇について執筆を始める。
6話の短編を語るように綴られていて、ホラーとかミステリ小説というよりか、体験談を淡々と話しているような、なんかドキュメンタリーっぽさを感じる。
そんな疑問を持ちながら、読み進めました。
これは芦沢さんが体験(聴いた)したことなのか、あとがきも何もない。
すべて文章が「私」となっているので、芦沢さんご自身のことだろうかと思わずにはいられない。
そんな臨場感を感じながら、一話一話の伏線が回収され、結末がはっきりしないところに消化不良を感じつつも、それは現実に起こったことだからと、自分なりに納得し殊更背筋が冷たくなるのを覚えました。
そして、本書のカバーの裏側に血の落ちた染みが印刷されています。
「染み」という一話があるので、なるほどそういうことかと思っていましたが、読み終えたあとにその染みは作中にあった無数の「ある文字」で書かれていたことに気付きました。
手が凝ってますね。見落とすところでした。
暑くなる季節に一歩早い納涼の本でした。梅雨が明けた熱帯夜にでもいかがでしょうか。