【あらすじ&ひとりごと】
森山東さんの京都を舞台に繰り広げられる、祇園の芸舞妓をめぐる雅びなホラー作品です。読み進めていくうちに、実はミステリでもありました。
怪異の正体とは、、、徐々に明かされていく驚愕の真実。
『お見世出し』で日本ホラー小説大賞短編賞を受賞され、その後に『デスネイル』、そして三作目が本作品です。三作品の中でこの作品が一番おもしろかったです。
舞妓を志す恵里花は、祇園南一である老舗のお茶屋「夕月」を訪れる。女将の月春は恵里花の才能を直感し、夕月に置くことを認めるが、恵里花の周囲では不可解な霊現象が起き続ける。
それは夕月に伝わる伝説・梅姫の呪いによるものなのか、華やかな祇園の世界に巻き起こる悪夢と悲劇を描く連作短編集です。
これは祟りというよりも生きた人間の怖さですね。やはり何よりも怖いのは、生きている人間の執念なのかもしれません。
芸舞妓として生きる華やかな世界の裏には、舞いや三味線の稽古、大変な苦労もあるのだろうけど、その中に蠢く、嫉妬や恨みが現実にあったりするのかなあと思うと、怖くなってきますね。
どの社会でも表と裏はあるものですが。
結末の展開は意外で予想していませんでした。
ホラーとミステリが融合されおもしろかったです。嫉妬や憎しみ、恨みが描かれていく中で、少しずつ悲しみに変わりながら、最後に儚い余韻が残る作品でした。