【あらすじ&ひとりごと】
小野寺史宜さんの本を初めて読みましたが、とても素敵な作品でした。
先行き不安で悲しい現実を突きつけられているのに、なぜかニンマリと微笑ましくストーリーが進んでいく。
鳥取から上京し私大に進学した主人公・柏木聖輔20歳。
しかし、両親を亡くし一人となった聖輔は大学を中退する。
仕事を探そうと思いつつも動き出せない日々が続くが、ある日、空腹から揚げ物の匂いに吸い寄せられ、砂町銀座商店街へと歩くと「おかずの田野倉」にたどり着く。
最後に残った50円のコロッケを買おうとするが、見知らぬお婆さんに譲る。
そこから新たな出会いと自身の未来への再生が始まる。
聖輔の誠実さと優しさが心に沁みる。
そして聖輔を囲む人たちの温かさが何とも言えない。
なんだか悲しくないのに涙が出てくる。
短いセンテンスで小刻みに綴る文章が、聖輔の気持ちをより際立たせ、その言葉ひとつひとつが明るく感じさせながらも、胸に突き刺さってくるからなのかもしれない。
人の優しさに気付いて、また新たに人に優しさを与える。
そうやって互いを思いやることで信頼し合えれば、頼ったり頼られたりと、たとえひとりきりになっても決してひとりぼっちではないのだと思わせてくれる。
人との関わりが少なくなった現代だからこそ、そんな人と人がつながる社会を望む作者の思いなのかなぁと思います。
小野寺さんの作品『ひと』の次は『まち』、そして『いえ』が出版されています。
ぜひ順番に読んでいきたいと思います。
きょう、大阪のヤンマースタジアムまでミスチルのコンサートに行ってきました。とてもよかったです。52,000人のひとが、ひとつになっていました。