ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】『さよならの向う側 i love you』清水晴木 著

マイクロマガジン社(2022)

【あらすじ&ひとりごと】

 清水晴木さんの『さよならの向う側  Goodbye,My Dear』のその後を綴る続編、『さよならの向う側  i love you』を読みました。

 

 亡くなったあとに一日だけ現世に戻り、自分の会いたい人に会える時間が与えられる。ただし、そこには残酷なルールがあって、会えるのは自分が死んだことを知らない人だけ。

 この最後の時間を与えられる不思議な場所「さよならの向う側」を訪れ、案内人に導かれ、最後の再会を選択する人たちを綴る4話の連作短編です。

 

 やはり最後に会いたいのは、自分の身近な人。でもルールが障害となって会えない。前作では、気が付かれないよう子を見守る母親や、自分を忘れてしまった認知症の父親を訪れる息子、変装して思いを伝える恋人などが描かれていました。

 

 今作も前作同様、ルールに触れないよう、案内人が陰ながらあの手この手で応援し、最後の再会への粋な計らいをしてくれます。

 「月の光」、「明日への手紙」、「I love you.」、「糸」の4遍、死がテーマなのにどれも読み終わりが温かい作品でした。

 

 どれも間接的にしか会えない、というか思いを伝えることしかできないもどかしさに胸が熱くなります。このルールが何とも最後の時間を切なくするところですね。

 逝く人、残される人、悲しみの中だからこそ気付くことができる、最後に感じる幸せなのかもしれません。

 

 サブタイトル「i love you」の「i」が小文字なのはなぜなのかな。解説はありません。

 それとは関係ないけど、夏目漱石はI love youを「月が綺麗ですね」、二葉亭四迷は「死んでもいいわ」と意訳しているという件が作中にあります。そしてここでは、「君の為に生きる」という答えを主人公は見つけます。

 

 わかっていたはずなのに実はわかっていなかったり、言いたかったけど言えなかったり。互いの本当の思いに気付いていく優しい作品でした。

 

 こんな世界があったら、後悔を残してこの世を去っても、安心して成仏できますね。

 今をしっかり生きましょう。

 

fudemogura.com