ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】グリム童話『漁夫とその妻の話』

『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その15

『漁夫とその妻の話』〈KHM19〉

【あらすじ(要約)】

 昔、漁師とおかみさんが、汚い小さな家に住んでいました。

 ある日、漁師が釣りに出かけると、一匹のカレイが釣れました。
 漁師はそのカレイを売ろうとしますが、カレイに話しかけられ、自分は魔法をかけられた王子と言い、お礼をするから海へ戻してほしいと話します。漁師はビックリしましたが、カレイをカゴから出してやり、海へ放してやりました。

 

 漁師は家に帰り、そのことをおかみさんに話すと、お礼をすると言っているのだから、こんな汚い家ではなく、小さくても新しい家がほしいと今すぐカレイのところに行って、願いごとをするよう言いました。
 漁師は仕方なくもう一度海に行って、カレイに話しかけると、おかみさんの願いは叶ったと言います。
 漁師が家に帰ってみると、おかみさんが小さいけれど新しい家の前で喜んでいました。

 

 しばらくして、やがておかみさんが石造りの御殿に住みたいと言います。
 漁師が紫色や藍色、灰色になった海に行ってカレイにそのことを話すと、カレイは、おかみさんは戸口に立っていると言います。
 家に戻ってみると、小さな家はとても大きな石造りの御殿になっていました。

 

 おかみさんはまたこれにも飽きて、漁師に王様になりたいと言いました。
 漁師はおかみさんに怒鳴りつけられ、仕方なく黒ずんだネズミ色一色の海に行き、もう一度カレイにおかみさんの願いを言いました。
 家に戻ってみると家はお城に変わっており、おかみさんは王様になり、まわりには大勢の兵隊がいました。


 とうとう王様になったおかみさんですが、やがて飽きてしまいました。
 今度は、天子様になりたいと言います。
 漁師は真っ黒でドロドロになった海に行き、カレイにおかみさんの願いを話すと、今度も願いを叶えてくれました。
 家に帰ってみると、おかみさんは多くの近衛兵と侯爵、公爵を従え、天子様になっていました。


 でもおかみさんは、それもやがて飽きて、今度はローマ法王になりたいと言いました。

 漁師は、カレイにもそれはできないと言いますが、おかみさんに天子様になれたのだから法王にだってなれると怒鳴りつけられ、おどおどと出て行きました。

 海は煮え繰り返るように逆巻いて、轟々と鳴り響き、漁師はカレイにおかみさんの願いを話すと、今度も願いを叶えてくれました。


 でもやがて、おかみさんは法王様にも飽きてしまいました。

 今度はお日様やお月様を自分の力で昇らせることができる神様になりたいとおかみさんは言いました。
 漁師は、おかみさんに我慢して法王様でいてくれと頼みますが、もう辛抱できないと怒鳴りつけられ、慌てふためいて気が違ったように出て行きました。

 外は嵐が轟々と荒れ狂い、海は山のような高浪で、漁師はカレイに声を張り上げ、おかみさんの願いを言いました。
 するとカレイは、おかみさんは昔の汚い家にいますよと言いました。

 

【ひとりごと】

 欲を張りすぎてしまって、せっかく手にしたものを失う妻を持った漁師のお話です。

 この教訓はとてもわかりやすいですね。

 人間、欲をかいてはいけません。欲を出すとすべてを失う。人は現状に満足できないものですかね。

 身の丈にあった生き方をしていきたいものです。足るを知ることが幸せに生きる秘訣です。

 おかみさんの欲望がふくれあがるにつれて、海が荒れていくのが、カレイの気持ちを象徴しているようでした。でも、王子様だったカレイはその後どうなったのか。