ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】グリム童話『灰かぶり』

『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その17

『灰かぶり』〈KHM21〉

【あらすじ(要約)】

 お金持ちの男の妻が病気になり、死ぬときに幼い一人娘に、「いつも神様を大事にして、気立てよくすれば神様は助けてくれて、母さんも天国から見ている」と言い亡くなりました

 娘は毎日墓で泣いていましたが、神様を大事にして気立てよくしていました。

 

 それから父親は別の妻を迎え、二人の娘の連れ子がいて、美しくて白いのは顔だけで心は汚く真っ黒でした。

 その時から継娘として辛い日々が始まり、綺麗な着物は剥ぎ取られ、古い汚い服を着せられ、木の靴をあてがわれました。

 それから日の出前に起き、水を運び、火を焚き、食事の準備、洗濯など辛い仕事をしなければなりませんでした。

 さらに姉妹たちにいじめられ、悪口を言われます。

 豌豆やひら豆を灰の中にぶちまけられ、しかも寝床には入れず、かまどのそばの灰の中で寝なければなりませんでした。

 この娘は灰だらけで、灰かぶり娘と呼ばれました。

 

 ある時、父親が市場に行くので、娘二人に土産に何が欲しいかと聞くと、「綺麗な着物」「真珠や宝石」と言いました。

 灰かぶりに聞くと、「お父さんの帰り道で一番先に帽子にぶつかった木の小枝」と言います。

 父親は着物と宝石を買い、はしばみの小枝を持って帰ってきました。

 灰かぶりはお礼を言って、母親の墓に行き、小枝を墓に挿して泣いていました。

 

 やがてその枝は立派な木になり、灰かぶりは毎日3回泣きながらお祈りをしていると、白い小鳥がやってきて、望みのものを言うと投げ落としてくれるのです。

 

 この国の王様が饗宴を開くことがありました。三日間、国中の嫁入り前の美しい女たちが全員招かれるのですが、王子が花嫁を探し出すためでした。

 姉妹二人は、そのお席へ出ることにうきうきし、灰かぶりを呼びつけ、「私たちの髪をすいて、靴を磨いて、留め金をしめてね。お呼ばれでお城へ行くの」と言いました。

 

 そこで、灰かぶりも行きたいと継母にお願いしました。

 着物も靴もないのにダンスをするのかと継母は言いますが、灰かぶりがせがむので、「ひら豆を灰の中にぶちまけてある。元通りに戻したら行かせてあげる」と言いました。

 灰かぶりは外へ出て、鳥たちを呼び寄せると、一斉に集まってきて、灰の周りに降りてきて、豆を拾って片付けました。

 

 これで自分も一緒に行けると思いニコニコしていましたが、継母は、着物がない、ダンスができないでは笑われるだけだと言うと、灰かぶりが泣きだしたので、「山盛り二皿のひら豆を一時間で灰の中から拾い出せたら、連れて行ってあげる」と言い、こんなことできないと思っていたのです。山盛り二皿のひら豆をぶちまけると、もう一度鳥たちに手伝ってもらい、一時間で片付けました。

 

 継母は、「何をしたってお前は行けない。着物もないし、来たら私たちが恥をかく」と言い、三人で行ってしまいました。

 

 灰かぶりは母親の墓に行き、いつもの鳥に黄金と白銀の糸で織った着物と、絹糸と白銀の糸で刺繍されたお座敷靴が欲しいと願うと、投げ落としてくれました。

 

 灰かぶりは、その着物を着て饗宴の席に行きますが、姉妹にも継母にも灰かぶりが分からず、どこかの王女様だと思っていました。それほど美しく見えたのです。

 王子は灰かぶりのところへ来て手を取り、ダンスを踊りました。他に灰かぶりと踊りたい者が来ると、「これは僕の踊り相手だよ」と言うのでした。

 

 日が暮れて、うちへ帰ると灰かぶりが言い出すと、王子も一緒に行くと言います。灰かぶりは王子からすり抜けて、鳩小屋に飛び込みました。

 そこへ灰かぶりの父親が出てきたので、王子が鳩小屋に飛び込んだ娘のことを聞きます。父親は灰かぶりのことではないかと考えましたが、斧で鳩小屋を真っ二つに割ると中には誰もいません。

 そして皆が帰ってきた時には、灰かぶりはいつものように汚い着物で家にいました。

 

 次の日、饗宴にまた父親と継母、姉妹が出かけると、灰かぶりは、はしばみの木のところに行って、小鳥に願うと、前の日よりも立派な着物を投げ落としてくれました。

 

 この着物を着て饗宴の席に現れると、だれもがその美しさに見とれ、待ち構えていた

王子は灰かぶりとすぐにダンスを始めました。

 

 日が暮れて、灰かぶりが帰ろうとすると、王子はどの家に入るか見るつもりでしたが、娘は跳びはねるようにして、家の後ろの畑に入りました。

 畑には梨の木が生えていて、すばしっこくよじ登り、王子はどこに行ったのか分からなくなりました。

 待っていると父親が来たので、娘に逃げられてしまったことを話すと、父親は灰かぶりではないかと考えながら、斧で梨の木を伐り倒しましたが、誰もいません。

 そして皆が家に入ると、灰かぶりはいつもどおり灰の中で寝転んでいました。

 

 三日目も全員が出かけるのを待って、墓へ行き、いつもの鳥に願い、着物を落としてもらいましたが、世の中の誰も手に入れたことがないような美しく光り輝いていたもので、お座敷靴は金でできていました。

 

 饗宴の席につくと、王子は灰かぶりとばかり踊ります。

 そして日が暮れ、灰かぶりは立ち去ろうとしました。王子は追いかけますが、追いつけませんでした。

 ところが王子は策を考えていて、階段一面にべたべたしたチャンを塗っておいたので、灰かぶりが跳び下りたときに左のお座敷靴がくっついて、そのまま置き去りになりました。

 王子はその靴を拾い上げると、小さくてあざやかで、どこまでも黄金でした。

 

 あくる朝、王子は靴を持って、いつもの男のところに行き、「ぼくが結婚しようと思うのは、この黄金の靴がぴったり合う女に限る」と言いました。

 これを聞いて、姉妹二人は喜び、姉娘が靴を履いてみますが、つま先が大きいので足が入りません。

 すると母親は、包丁を渡して「足の指を切っておしまい。お妃になれば歩かなくて済む」と言いました。姉娘はつま先を切り落として、痛いのを我慢して無理やり靴を履きました。

 王子はこの姉娘を自分の嫁だと思い、馬に乗せて一緒に行ってしまいました。

 

 ところが、例の墓のところを通ると、はしばみの木に家鳩が2羽とまっていて、「靴は血だらけ、靴が小さ過ぎる、本当の嫁はまだうちにいる」と言います。

 王子は本当の嫁ではないことに気付いてうちへ戻ると、もう一人の娘にこの靴を履かせてみたいと言いました。

 それで妹娘が靴を履いてみると、つま先は入ったのですが、踵が大き過ぎるのです。

 すると母親が包丁を渡して「踵を少し切ってごらん。お妃になれば歩かなくて済むから」と言いました。

 娘は踵の端を切り取って、痛みを我慢しながら履きました。

 王子はこの娘を嫁のつもりで馬に乗せて連れて行きました。

 

 二人がはしばみの木の傍を通ると、家鳩が二羽とまっていて、「靴は血だらけ、靴が小さ過ぎる、本当のお嫁はまだうちにいる」と言います。

 王子は本当の嫁ではないと気付いてうちへ戻り、「これも本当の嫁ではない。他にいないのか」と言うと、父親が「ございません。尤も前の家内の残した、育ちの足らないむさくるしい娘がもう一人いるにはいるが、これはとてもお嫁に行けるものではありません」と言いました。

 

 王子がその娘を連れてきてほしいと言うと、母親は滅相もないと答えますが、王子が会いたいと剛情を張ったので、灰かぶりは呼び出されました。

 娘は王子の前に行き、黄金の靴を履くとぴったり合いました。それから王子は娘が立ち上がったところを見て、これが舞踏の相手だとはっきり分かり、「これが本当の嫁だ」と言いました。

 継母と二人の姉妹は驚き、怒り出しましたが、王子は構わず灰かぶりを馬に乗せ連れて行ってしまいました。

 

 二人がはしばみの木の傍を通ると、二羽の家鳩が「靴に血はついてない、靴はぴったりだ、本当のお嫁を連れて行く」と言って、灰かぶりの肩に一羽ずつとまりました。

 

 そして、王子とのご婚礼の式が挙げられることになり、あの姉妹がやってきて、福を分けてもらうつもりでいました。

 花婿花嫁が教会へ行く時になると、姉妹が付き添いました。すると、二羽の鳩が二人の姉妹から目玉を一つずつつつき出しました。

 式が済んで教会から出ると、二羽の鳩が姉妹のもう一方の目をつつき出しました。

 こうして二人の姉妹は、自分たちが意地悪をし、替え玉になろうとした罰があたって、一生涯めくらでいることになりました。

 

【ひとりごと】

 皆さんがよく知っているシンデレラのお話ですね。でもグリムは、一般的に知られているお話とは少し違っていて、かぼちゃの馬車や靴がガラスの靴でなかったりします。

 世界中には類話が多く存在していて、フランス童話の『サンドリヨン』が私たちが知る『シンデレラ』のお話により近いそうです。

 「シンデレラ」「サンドリヨン」、どちらも「灰だらけの小娘」という意味です。

 

 ストーリーでは、お決まりの悪に対する徹底的な罰。

 いつも思うのですが、グリムに登場する父親は何なのでしょうか。これも同罪のような気がしますが。

 

 つらい毎日が続いても、耐えていればいつかきっと良いことがありますかね。

岩波文庫(1979)