ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】グリム童話『赤ずきん』

『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その23

赤ずきん』<KHM26>

【あらすじ(要約)】

 昔、小さな愛くるしい女の子がいました。この子を一番かわいがっていたのは、お祖母さんでした。

 あるとき、お祖母さんは赤いビロードの頭巾をあげました。これがこの子にとてもよく似合って、他のものをかぶろうとしなくなったので、皆がこの子を赤ずきんと言うようになりました。

 

 ある日、お母さんが「お菓子とぶどう酒をお祖母さんのところへ持って行ってちょうだい。病気で弱っているから、これを食べると体にいいのよ。それから外へ出たらおてんばしないで歩くこと、脇道へ入っちゃダメ。転んで瓶を割ったら、お祖母さんにあげるものがなくなるからね。部屋に入ったらあいさつをして、その前にきょろきょろ見回したりしないでね」と赤ずきんに言いました。

 

 お祖母さんは村から30分くらいかかる森に住んでいて、赤ずきんが森にさしかかったとき、狼に会いました。

 赤ずきんは狼が悪い獣だと知らなくて、怖いとも思いません。

 狼は「こんにちは、赤ずきん」と声をかけ、「こんなに早くどこへ行くの」と聞きます。赤ずきんは「お祖母さんのところ。お菓子とぶどう酒を食べてもらって丈夫になってもらうの」と言いました。

 狼がお祖母さんの住む場所を聞くと、赤ずきんは「森をあと15分はかかるわ。大きなかしわの木の下にあるの」と答えました。

 狼は「若くて柔らかい、油がのっていて婆さんよりうまいぞ。何とか騙して二匹とも食ってしまおう」と考えました。

 

 狼は少しの間、赤ずきんと歩きましたが、やがて「赤ずきん、このあたりに咲いているきれいな花を見てごらん。小鳥が歌をうたっているのも聞こえていないみたいだ。まるで学校へ行くように真面目に歩いてるんだね。森の中はおもしろいのに」と言いました。

 赤ずきんは目をあげました。きれいな花でいっぱいなのを見ると、お祖母さんに摘んだばかりの花束を持って行けば喜んでくれると考え、森の横道へ入り込みいろいろな花を探し始め、森の奥へと入り込みました。

 

 その間に、狼はまっすぐお祖母さんの家へ行き、戸をたたきました。

「どなた?」

赤ずきんよ。お菓子とぶどう酒を持ってきたの。開けてちょうだい」

「把手を押しておくれ」

 狼は把手を押し戸が開きました。狼は一言も言わず、まっすぐお祖母さんの寝床へ行くとお祖母さんを食べてしまいました。それから狼はお祖母さんの服を着て、ずきんをかぶり、寝床に寝てカーテンをひきました。

 

 赤ずきんは花を摘んで歩き回り、もう持てなくなるとやっとお祖母さんのことを思い出しました。

 

 赤ずきんは家の戸が開いたままになっているので不思議に思いました。部屋に入ると様子が変なので、「今日は何だか気味が悪い。いつもはうれしいのに」と考えました。

「お早うございます」と言っても何の返事もありません。赤ずきんは寝床に行き、カーテンを開けると、お祖母さんがずきんをかぶり、奇妙な格好で寝ていました。

「お祖母さんの耳、とても大きいのね」

「だからよく聞こえるのさ」

「お祖母さんの目、ずいぶん大きいのね」

「お前がよく見えるようにだよ」

「お祖母さんの手、とても大きいのね」

「お前をよくつかめるようにだよ」

「お祖母さんの口の大きいこと、びっくりしたわ」

「お前をよく食えるようにだよ」

 狼はこう言うか言わないうちに寝床から飛び出してきて、赤ずきんを飲み込んでしまいました。

 狼は食べたいだけ食べて、また寝床にもぐりこむと、大きないびきをかき始めました。

 

 猟師がちょうど家を通りがかり、「婆さんが大きないびきをかいているぞ。大丈夫か見てやらねば」と考えました。

 猟師は部屋に入ると、狼が寝ているのが見えました。「お前をずいぶん探したぞ」と狼を撃とうとしたとき、狼は婆さんを食べたかもしれない、まだ助かるかもしれないという気がしてきて、撃つのをやめ鋏で眠っている狼の腹を切り開き始めました。

 2、3回切ると、赤いずきんが見え、また2、3回切ると女の子が飛び出て、「ああ、びっくりしたこと。狼のお腹の中、真っ暗なのね」と叫びました。

 

 そのあと、お祖母さんも出てきましたが、息も絶え絶えでした。そして、赤ずきんは急いで大きな石をとってきて、狼のお腹に詰めました。狼は目が覚めると逃げようとしましたが、石が重たいので倒れて死んでしまいました。

 

 それで三人とも安心しました。猟師は狼の皮をはぎ、家に持ち帰りました。お祖母さんは赤ずきんが持ってきたお菓子を食べ、ぶどう酒を飲んだりして元気になりました。赤ずきんは、お母さんがいけないって言った、一人で森の脇道へ入り込むようなことは二度としないと考えました。

 

 

 またこういう話もあります。

 あるとき、赤ずきんはまたお祖母さんにお菓子を持って行くと、別の狼が話しかけてきて、赤ずきんを横道へ連れ込もうとしました。

 しかし、赤ずきんは用心深く、まっすぐ道を進み、お祖母さんに狼に会ってあいさつしたけど、悪だくみが目つきでわかったわ、あれがもし横道を歩いていたら、私を食べていたでしょうね、と話しました。

 お祖母さんは「戸に錠をおろして狼が入れないようにしてやりましょう」と言いました。

 やがてまもなく、狼が戸をたたき、「開けてちょうだい、お祖母さん、赤ずきんよ、お菓子を持って来たのよ」と叫びます。

 しかし、二人は何も言わず、戸も開けません。すると、ごましお頭のおじいは、2、3回家の周りをぐるぐる歩いてみましたが、とうとう屋根に飛び乗りました。赤ずきんが夕方に家に帰るまで待っていて、あとからこっそりつけて行き、食べてしまうつもりなのです。

 しかし、お祖母さんは狼の企んでいることに気が付きました。

 お祖母さんは「赤ずきん、手桶を持ってきて。昨日腸詰を作ったので、その茹でたお湯を水ぶねの中に入れとくれ」と言いました。

 赤ずきんは何度も腸詰を茹でた湯を運び、水ぶねをいっぱいにしました。すると腸詰のいい匂いが狼の鼻の穴へプンプン入ってきました。狼は鼻をヒクヒクさせ、下を覗き、首をあまり伸ばし過ぎたのでので、体を支え切れなくなり、屋根から水ぶねの中へ滑り落ち、溺れて死んでしまいました。

 赤ずきんはいそいそと家に帰り、誰にも何もされませんでした。

 

【ひとりごと】

 だれもがよく知っている有名な「赤ずきんちゃん」のお話です。私も久しぶりの再読です。

 狼を一度退治してめでたしめでたしですが、実はグリム童話赤ずきんちゃんはもう一度狼に遭遇しているのですね。

 でも、狼に食べられてしまった最初の失敗で、二度目は騙されません。

 やはり子どもは失敗から学んでいくものです。(でも命を賭けた失敗(経験)は怖いですね。

 私もそうでしたが、親にやってはいけない、行ってはいけないと言われると、反対に好奇心が出てきてやってしまうのが子どもですね。

 ちょっとしたことを思い出させてくれるのがこのグリム童話ですね。

岩波文庫(1979)