ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】グリム童話『ものわかりのいいハンス』

『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その30

『ものわかりのいいハンス〈KHM32〉』

【あらすじ(要約)】

 ハンスの母親が、「ハンスや、どこ行く?」と聞く。
「グレーテルのとこへ」とハンスが返事をする。
「うまくやんなよ」
「大丈夫、うまくやるってば。あばよ、おっかあ」
「あばよ、ハンス」
 ハンスはグレーテルの家に行く。


「こんにちは、グレーテルさん」
「こんにちは、ハンスさん。何かいいもの持ってきた?」
「何も持ってこないよ。何かくれるもんない?」
 グレーテルは、ハンスに針を一本やる。
「あばよ、グレーテルさん」
「あばよ、ハンスさん」

 ハンスは針を干し草車に刺し、車のあとについて家に帰っていく。


「おっかあ、こんばんは」
「こんばんは、ハンス。どこ行ってきた?」
「グレーテルのとこさ」
「おまえ、何を持ってってやった?」
「何も持ってきゃしない。向こうでくれたよ」
「グレーテルは何くれたの?」
「針くれたよ」
「その針はどこにあるの?」
「干し草車に刺した」
「ばかなことするね、針は袖に刺しておくもんだよ」
「どうでもいいや、今度はうまくやるよ」


「ハンスや、どこ行く?」
「グレーテルのとこさ」
「うまくやるんだよ」
「大丈夫、うまくやるってば。あばよ、おっかあ」
「あばよ、ハンス」

 ハンスはグレーテルの家に行く。


「こんにちは、グレーテルさん」
「こんにちは、ハンスさん。何かいいもの持ってきた?」
「何も持ってこないよ。何かくれるもんない?」
 グレーテルは小刀をやった。
「あばよ、グレーテルさん」
「あばよ、ハンスさん」

 ハンスは小刀を袖に刺して家に帰っていく。


「おっかあ、こんばんは」
「こんばんは、ハンス。どこ行ってきた?」
「グレーテルのとこさ」
「何を持ってってやった?」
「何も持ってきゃしない。向こうでくれたよ」
「グレーテルは何くれたの?」
「小刀をくれたよ」
「その小刀はどこにあるの?」
「袖に刺した」
「ばかなことするね、小刀は袋に入れとくもんだよ」
「どうでもいいや、今度はうまくやるよ」

 

 またハンスはこの日も母親と同じ会話をして、グレーテルを訪れます。

 そしてまた同じ会話をして、グレーテルから子ヤギをもらう。受け取ると手足を縛って袋に押し込む。帰宅すると子ヤギは息が詰まって死んでいました。

 母親が「ヤギは綱へ繋ぐもんだよ」と言うと、「どうでもいいや、今度はうまくやるよ」とハンスが言います。

 

 また次の日も母親と同じ会話をして、グレーテルを訪れます。

 そして今度はグレーテルから豚のあぶら肉を一塊もらいます。受け取ると綱へ縛りつけて、自分の後ろに引きずって行く。

 すると犬が集まってきて食べてしまい、帰宅したときにはなくなっていました。

 母親からは「あぶら肉は頭へのっけてくるもんだよ」と言われ、「どうでもいいや、今度はうまくやるよ」とハンスは言います。

 

 またまた次の日もハンスは母親と同じ会話をして、グレーテルを訪れます。

 そしてグレーテルから子牛を一頭もらいます。受け取り、それを自分の頭にのせると、頭を踏みにじられます。

 母親からは「子牛は引っ張ってきて、カイバ架に立たせとくもんだよ」と言われ、「どうでもいいや、今度はうまくやるよ」とハンスは言います。

 

 また同様にハンスはグレーテルを訪れます。

「こんにちは、グレーテルさん」

「こんにちは、ハンスさん。何かいいもの持ってきた?」

「何も持ってこないよ。何かくれるもんない?」

 そしてグレーテルは「あたし、あんたと一緒に行く」と言いました。

 ハンスはグレーテルを捕まえると、綱に縛りつけてハイハイドウドウと引っ張って、カイバ架に繋いでしまいました。

 

 それからハンスは母親のところへ行く。

「おっかあ、こんばんは」
「こんばんは、ハンス。どこ行ってきた?」
「グレーテルのとこさ」
「何を持ってってやった?」
「何も持ってきゃしない。向こうでくれたよ」
「グレーテルは何くれたの?」

「何もくれやしない。一緒に来たよ」

「おまえ、グレーテルをどこへ置いてきたの?」

「綱で引っ張ってきて、カイバ架に縛りつけて草をおっぽり出しといた」

「ばかなことするね、あの娘には優しい目をなげてやるもんだよ」

「どうでもいいや、今度はうまくやるよ」


 ハンスは家畜小屋に行って、ありったけの子牛や羊の目玉をほじくり出し、その目玉をグレーテルの顔へ叩きつける。

 グレーテルは腹を立て、綱をふり切って逃げ出してしまう。そして、ハンスの嫁になるのを御免こうむってしまいました。

 

【ひとりごと】

 タイトルの「ものわかりのいい」は、もう皮肉ですね。間抜けというか、こんな人と結婚なんて無理無理。

 ママの言うことをよく聞くお利口さんもどうでしょう。

 普通は気に入った女性を釣るまでは、せっせと貢物をする男性もいるのにその逆です。しかも、「あんたと一緒に行く」とまで言わせています。

 惜しい人を逃しましたね。

 でも、最後のオチは笑えました。

岩波文庫(1979)