【あらすじ&ひとりごと】
恒川光太郎さんの『真夜中のたずねびと』を読みました。
本作品は、「ずっと昔、あなたと二人で」「母の肖像」「やがて夕暮れが夜に」「さまよえる絵描きが、森へ」「真夜中の秘密」の5篇からなる短編ホラーです。
本の帯には「忍び寄る足音に、背筋が寒くなる連作集」とありますが、登場人物がリンクする部分や、恒川さん作品によくある同じ時間軸の上で各編が展開されているだけで、それぞれのストーリーは独立しています。
各編に共通していることは、主人公を理不尽な不幸が襲うが、結末は闇へと消えていく曖昧な世界。
人が生きているから話しているのか、死んでいるのに話しているのか、そして本当にあったのかどうかもわからない。
正解のない、読み人にその後を想像させるような恒川さんらしい世界でした。
これまでの作品と比較すると、幻想的な独特の世界観のある恒川ワールドが少し薄めで、今回は異常な心理描写を出したサスペンス要素の強い作品でしたが、人間の強さや弱さ、根底にある人間の本質の怖さを表現する恒川さんは健在で、十分楽しむことができました。