ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【ひとりごと】おばあさんと地域に愛された食料品店(回顧)

 私が前職で福祉のセクションに配属されていたときのことです。

 昔から地域の生活を支えた歴史あるスーパーが昨年閉店となったことで、当時、そのお店に通っていたおばあさんのことを思い出しました。福祉の制度を利用しているおばあさんで、私はそんな方々を120世帯ほど担当していました。

 

 このおばあさんは一人暮らしで、身内は遠方に住む妹だけでした。

 私は、三ヶ月に一度、おばあさんを訪問することになっていて、決まって留守のときは自宅から歩いて5分程度のところにあるそのスーパーに買い物に行っていました。私がスーパーに向かうと、ヨロヨロと買い物袋を提げて、帰り道を歩いているので、袋を持ってあげて自宅まで一緒に帰ったこともよくありました。

 

 おばあさんは85歳という年齢の割にはしっかりしているのですが、身体の衰えは隠せず、歩行などが弱々しくなって、一人暮らしが心配な状況になってきたため、デイサービスの利用はしていましたが、施設入所の検討をすすめていくことになりました。

 

 本人とは焦らずゆっくり、妹さんと担当民生委員を交え話し合いました。本人も先々のことや妹さんの心配も考えたのか、妹さんがいつでも遊びに来られる施設だったらいいと、おばあさんは入所を決めました。

 

 おばあさんはまだまだ自分のことは自分でできるため、市の養護老人ホームに入所することになったのですが、借家や家財の処分、引っ越しの手続きなどを私のほうでも進めていたときに、民生委員からおばあさんの訃報がありました。

 私が駆けつけると、自宅の布団で亡くなっていたとのことでした。民生委員からは、「あなたが施設の話を出したことでストレスが溜まり、寿命を縮めたのではないか」というようなことを言われました。

 

 数ヶ月後、妹さんが訪れ、お世話になったとおばあさんの残したお金を市に寄付されました。妹さんはおばあさんとよく似ていて、顔を見つめ話をしていると、私はあの時、きちんとおばあさんと向き合えていたのか、とても複雑な思いでした。

 

 当時、このような出来事がままあって、忘れたつもりがちょっとしたきっかけで思い出すなんて、いまだに消化しきれずに自分のどこかに残っているのかもしれませんね。

 地元スーパーの閉店を聞き、ふと思い出した十数年前の出来事でした。