『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その9
『森のなかの三人一寸ぼうし』〈KHM13〉
【あらすじ&ひとりごと】
昔、妻を亡くした男と、夫を亡くした女がいました。
男には一人の娘、女にも一人の娘がいます。
娘たちは知り合いになり、女のところへ行きます。そのとき、女は男の娘に「私がお父さんと結婚したがっていると言ってほしい。そうしたら、あなたを毎朝ミルクで体を洗わせ、ワインを飲ませてあげる。でも、うちの娘には水で体を洗わせ、水を飲ませる。」と言いました。
その娘は家へ帰り、父親に話します。男は、決めることができず、長靴を脱ぎ、「この長靴には底に穴があいているが、それを屋根裏の大きな釘につるし、その中に水を入れなさい。もし水が漏らなければもう一度妻をもらう」と言いました。
娘は言われたとおりにすると、水が穴を塞ぎ、長靴は水で一杯になったため、父親はその未亡人と結婚しました。
次の朝、二人の娘が起きると、男の娘の前には体を洗うためのミルクと飲むためのワインがあり、女の娘の前には体を洗うための水と飲むための水があります。
2日目の朝には男の娘には女の娘と同じ体を洗うための水と飲むための水がありました。
そして3日目の朝には、男の娘には洗うための水と飲むための水があり、女の娘には洗うためのミルクと飲むためのワインがありました。そして、それが続きます。
女は継子をいじめ、継子が美しく、自分の娘が醜いのを妬みました。
冬の日、継母は紙のドレスを作り、継子にこれを着て森へ行き、苺をとってくるよう言います。
継子は冬に苺はならない、紙のドレスでは寒いと言うと、継母は籠1つ分の苺を持ってくるまでは帰るなと言います。
そして固いパンを少し渡され森へ行きますが、見渡す限り雪で一枚の葉も見当たりません。
森の中に小さな家が見え、そこから3人の小人が覗いていました。娘は挨拶し中に入ります。
娘はストーブのそばに座り、朝食を食べ始めますが、小人たちが欲しいと言うので、パンを分けてあげました。
小人たちは冬に紙のドレスを着て、何をしているのかと聞くと、娘は苺を探さなければ家に帰れないと答えます。
小人たちは娘に箒を渡し、裏口の雪を掃くよう言いました。
娘が外に出ると、3人の小人たちは、パンをくれたとてもいい子だから何をあげようかと相談します。
最初の小人は娘が毎日美しくなる贈り物、2番目の小人は娘が話すたびに口から金が出てくる贈り物、3番目の小人は王様の妻になる贈り物にすると言いました。
娘は小人たちが言うとおりに箒で家の裏の雪を掃くと、そこには本物の熟れた苺がありました。
娘は喜んで籠一杯に集め、小人たちにお礼を言って家に帰りました。
娘が家へ帰り「ただいま」と言うと1個の金が口から落ち、森であったことを話すとまた口から金が落ち、部屋全体が金で覆われました。
継母の娘は羨ましくて、苺を探しに森へ行きたがるので、母親は立派な毛皮のコートを娘に着させ、バターパンとケーキを持たせました。
その娘は森の中の小さな家へ近づいたとき、3人の小人たちは外を覗いていましたが、娘は挨拶せずに家の中に入り、ストーブのそばに座ってバターパンとケーキを食べ始めます。
すると、小人たちが少しちょうだいと言いますが、娘はあげませんでした。
娘が食べ終えたあと、小人たちは裏口を掃くように言いましたが、自分は召使じゃないと娘は答え、小人たちが何もくれそうもないとわかると娘は出ていきます。
小人たちは、あの娘は行儀が悪くて、意地悪で妬み深い心をして、誰にも物をあげようとしないから、何の贈り物をしようかと相談します。
最初の小人は日増しに醜くなる贈り物、2番目の小人は話すたびに、ヒキガエルが口から出る贈り物、3番目の小人は惨めな死に方をする贈り物と言いました。
娘は外で苺を探しますが見つからず、怒って家に帰ります。
森であったことを母親に話すと、ヒキガエルが口から出てきて、継母は怒り、継子に意地悪ばかり考えますが、継子は日増しに美しくなります。
継母はヤカンを火にかけ、毛糸を茹で、毛糸が煮えると継子の肩にかけ、凍っている川へ行って、毛糸をすすぐように言います。
継子は川へ行くと王様が馬車でやってきました。王様は同情し、とても美しい娘なので、一緒に来ないかと言いました。
娘は了承し、小人たちが贈り物を約束したとおり、結婚式が行われました。
一年後、お妃は男の子を産みます。そして継母はお見舞のふりをして娘と一緒に宮殿に来ました。
意地悪な継母と娘はお妃をベッドから持ち上げ、窓から近くの川に投げ捨て、醜い娘をベッドに寝かせ、頭を覆って隠しました。
王様が帰り、お妃と話そうとすると、母親は熱で寝ていると言います。
そして、次の朝、王様は寝ているお妃と話しますが、前はお妃が答えるたびに金が落ちてきたのにヒキガエルが出てきます。王様には、母親はひどい熱のせいだと言います。
しかし、夜中に料理番が、鴨が水路を泳いでくるのを見ました。
その鴨は「王様は何をしているの?」と言います。料理番が答えないでいると、鴨は「私のお客たちは何をしてるの?」と言います。料理番は、お客もぐっすり眠っていると答えると、鴨は赤ちゃんはどうしているかと尋ねました。料理番は、ゆりかごで眠っていると言いました。
その後、鴨はお妃の姿になり二階へ行き、赤ちゃんに乳を飲ませると、また鴨の形になって水路を泳いで去っていきました。
こうして鴨は二晩来ました。3日目に鴨は料理番に、王様に敷居のところで剣を3回私の上で振るようにと言ってほしいと話します。
それで料理番は王様に話し、王様は剣を3回振りました。
すると以前のように健康な妻が立っていました。王様は喜びましたが、赤ちゃんが洗礼を受けることになっているときまでお妃をある部屋に隠しておきました。
洗礼が終わると王様は、人間を川に投げ捨てる人間には何が相応しいかと言いました。すると、継母はそんな人でなしは、釘が一杯刺さる樽に詰め、山から川に転がり落とすのが一番いいと答えます。
王様は、継母に自分で自分の刑を言ったと話し、王様は家来にその樽を持ってこさせ、継母と娘を入れるよう命じました。
二人を入れた蓋を釘で打たれた樽は、山を転がり、川に落ちました。(要約)
今回もグリム童話によくある、心の優しい善良な者が報われ、意地悪で怠け者が自分たちの悪行に対し報いを受けるというものでした。
だれかを憎んだり、妬んだりしても結局そこから何も生まれてはこないですからね。
でも再婚した父親が登場しませんね。不思議です。