【あらすじ&ひとりごと】
窪美澄さんの10年程前の作品です。
先日、ある中古本の書店からの送信メールを見ていたら、書店ランキングされた過去の作品の記事があって、気になった作品10冊を購入しました。
そのうちの1冊がこの『晴天の迷いクジラ』。
窪さんと言えば『ふがいない僕は空を見た』という程度のことしか私は知らなくて、今回初めて読みました。
この作品は、心に深い傷を持ち、生きる希望を失った主人公3人が、ある出会いによって生きることへの希望に気づき、歩み始める物語です。
由人はデザイン会社に勤務するが失恋と激務で鬱になる。
そしてその社長・野乃花は過去を捨て、がむしゃらに働いてきたが倒産する会社とともに人生を終わらせる決意をする。
2人は、死ぬ前に湾に迷い込んだクジラを見ようと、ある半島へと向かうが、途中で女子高生・正子を拾い、ひとときをともに過ごすことになる。
それぞれが心を壊していく人生が理不尽で読んでいてとても辛い。
でも、半島で出会った人たちの温かさや、沖への出口が見つけられないクジラを自分たちと重ね合わせ、絶望の淵から再生しようとする気持ちが見え始めたところから、物語の雰囲気がマイナーキーからメジャーキーへと転換していくのを感じながら、私の心も軽くなっていきます。
実際にこんな辛い思いをしている人たちはたくさんいます。
一度壊れた心を元に戻すことは、そんなに簡単なことではないけど、暗闇が続く中でもきっと何かしらの希望の芽が出るはず。
だから、ただ生きているだけでいいから、生きていくべきですね。